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用語説明

性を売る(女性の)行為、性を買う(男の)行為、(女性に)性を売らせる行為は、その社会の認識を反映して、さまざまに呼ばれてきました。1956年の売春防止法制定前後の時期から、今日に至るまで、ざっと下記の呼び方があるので説明しましょう。なお、今後も新しい言葉が生み出される可能性があります。

 

売春 買春 売買春 買売春 性売買 性買売 性搾取 セックスワーク

 

売春:性を売らされる行為は長い歴史を持っており、こうした行為は、その時代の認識を反映して、戦前は「売淫」「売笑」などと呼ばれてきましたが、1956年の売春防止法の制定前後の時期から、「売春」と呼ばれるようになりました。

 

買春:1970年代から80年代にかけて、韓国、台湾、フィリピンへ、日本人男性によって女性を買うことを目的とした買春観光が頻繁に行なわれ、国際的な問題になりました。こうした中で、日本の女性運動によって、新たにこの言葉が生み出されました。つまり、非難すべきなのは売春を行う女性の側ではなく、買う男性の側であるとの認識の転換に基づいて、買う男の行為を可視化・問題化するために生み出された言葉です。後述のように、買春の「春」という字は、実態を表していないので、この言葉にも問題はありますが、今日広く使用されている言葉なので、このサイトでも使用します。

 

売買春/買売春:買春という言葉が生み出された結果、売る女性・売らせる業者・買う男をすべて含む言葉として、売買春と言う言葉が生み出されました。その後、買う男の行為が許容されているから、女性たちが性を売らねばならない状況になってしまうという問題点をいっそう強調すべきであるとの認識から、買売春という言葉がさらに生み出されました。

 

性売買:1990年代後半に韓国の女性学研究者が新たに造語・使用しはじめ、今日の韓国では一般に使かわれるようになりました。「売春」の「春」という言葉が、暖かい季節を連想させ、痛みを伴う性を売る行為の実態を表していないとの批判、さらに性産業における取引の側面を浮上させるため、登場した新しい言葉です。実態は「春」の売買ではなく、性の売買なのだというストレートに実態を表す言葉です。2004年に韓国で「性売買防止法」が制定された前後の時期から、日本でも「売買春/買売春」に代わり、この性売買が使用されることが増えました。

 

性買売:ごく近年、生み出された言葉です。性を買う男の問題性をより可視化するために、「買」の文字を前へ持って来る工夫がされています。私たちはこの考え方には賛同しますが、一般にはほとんど使用されていない言葉であるため、このサイトでは使用していません。

 

性搾取:性売買も性買売という言葉も、買う側・売らせる側と売らざるをえない側の権力関係を表すには未だ不十分との認識に基づいています。買う側(ほとんどが男)が、金という権力で売る側(ほとんどが女性)の性を蹂躙しているという考え方に基づく言葉です。私たちは、この言葉に最も共感するものです。しかしこの言葉はまだあまり普及していないことに加え、性を売る・売らせる・買う行為それぞれに言及する際には、この言葉でも表現しきれない現象が多くあります。

 

そのため、性を売る/売らされる行為については、やむを得ず必要に応じて、「売春」、「性風俗」(「売春防止法」「風営法」を参照)と表記することもあります。

 

また、ソープランドやデリヘルをはじめとする、いわゆる「性風俗店」については、「性風俗店」とそのまま表記したり、「性売買業者」と表記したりします。

最後に、「セックスワーク」という言葉について説明します。

 

セックスワーク:日本では1990年代以降に普及しました。見知らぬ人のセックスの相手をする行為を性的なサービス労働」とみなし、その他の労働と同様の行為であるとする考えに基づいています。しかし、この用語は、性産業と買春が、セクシャルハラスメントや他の性暴力の延長線上にある行為であり、それ自体が性暴力そのものとの認識を欠いています。したがって、私たちはこの言葉とその背後の考え方に反対です。

 (2024.3.8)

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