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買春/性搾取のない社会をめざして
――日韓の性売買女性とともに

Anti-Sexual Exploitation Project :
With survivors Japan(ASEP)

About Us

私たちは、買春/性搾取のない社会をめざします。同様の目的を持つ日本・韓国の性売買経験当事者女性たちの活動と女性の人権運動に連帯しながら、フェミニズムの立場に立って、日本・韓国や世界各地の性売買に関係する現状や歴史、法制度に関する調査や研究をしています。私たちは、Anti-Sexual Exploitation Project :With survivors Japan、略称をASEP(アセップ)と言います。

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日本の「AV新法に反対するアクション」@新宿駅前(2022年5月22日)
韓国の「性売買処罰法改正連帯」の共同行動発足式@国会前(2022年3月22日)
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買春は性搾取であり性暴力

自分の性行為の相手を、金銭を支払って誰かにさせることを買春と言います。カネを支払って性行為の相手をさせることは、「カネという権力」で性行為をさせることです。買春の相手をする/させられる側から見れば、それは、しばしばお金を得るためのやむをえない行為であり、望んで行なう性行為とは異なります。

 

買春と、買春客に性行為の相手を提供して利益を上げる業者の行為を、私たちは性搾取ととらえます。日本では性搾取をする性産業が巨大なビジネスになっています。

 

不平等な力関係を背景にした性行為が、それを強いられた人に大きな苦しみをもたらすことは、長い歴史の中で明らかにされてきました。その結果、1990年代に「性暴力」や「セクシュアル・ハラスメント」という概念が確立してきました。

 

買春/性搾取は、性暴力やセクシュラルハラスメントの延長線上にある行為であり、それ自体が性暴力と言える行為です。

 

にもかかわらず、多くの場合、買春の相手をすることは「商売」、「セックスワーク」などと見なされて、それから生じる苦しみや人権侵害は見過ごされてきました。

性売買とは

私たちは、カネを支払って人に性行為の相手をさせること/させられることを「性売買(せいばいばい)」と呼びます。性売買は、買春者、性売買業者(性風俗店やスカウトなど)、そして彼らによって買春の相手をさせられる人によって成り立っています。こうした性売買のあり方を左右するのが国(や自治体)の法制度です。買春の相手をさせられることは、これまで「売春」と、買春や性産業を含む全体を「売買春(または買売春)」(ばいばいしゅん)などと呼ばれてきました(詳しくは用語解説を見てください)。最近では、本サイトのように「春」という文字を避けて、性売買と呼ぶことが増えてきました。

 

ほとんどの場合、性を買うのは男性買われるのは女性です。もちろん、社会にはもっと多様な性売買の形態があります。たとえば、同性愛の男性(ゲイ)やトランスジェンダー(主にトランス女性)など性的マイノリティの人々の性が買われている現状があります。女性が性を買われるにいたる背景に、女性の経済的困窮や女性差別などによる生きづらさ(後述)があり、それと同様に性的マイノリティの人々が性を買われるにいたる背景にも同じ問題があります。したがって、買春/性搾取をなくすためには、女性、そして性的マイノリティが、経済的困窮や女性差別に苦しまない社会を作っていくことが肝要だと考えます。

 

しかし、男性による女性への買春/性搾取が圧倒的に多い現状があり、しかもその他の性売買の形態に関する情報を私たちが十分に持っていないので、本サイトでは主に男性による女性への買春/性搾取を取り上げます。そして、買春の相手をする/させられる女性たちを「性売買(当事者)女性」、そこから脱した女性たちを特に「性売買経験(当事者)女性」と呼びます。

性売買女性への人権侵害に抗議する

性売買女性には何の罪もありません。どのようにして性を売ることになったとしても、そのことを非難されるいわれはどこにもないと私たちは考えます。性を売る人たちは、様々な理不尽にさらされ痛みを抱えながら、悲しんだり、それでも時には楽しいこともあったりしながら、懸命にそれぞれの人生を生きている/生き抜いた人たち(サバイバー)です。

 

私たちが批判するのは、買春者と性売買業者、そして買春を正当化する人々の考えや法制度、社会のあり方であって、性売買女性ではありません。

 

むしろ、私たちは性売買女性たちの発言に敬意を払って耳を傾け、彼女たちと連帯し、彼女たちへの差別や侮蔑に強く抗議し、性売買(経験)当事者女性とともに買春/性搾取という人権侵害のない社会をめざします。

困窮・ジェンダー不平等がもたらす性売買

多くの女性たちが性を売らざるをえなくなる原因は、個人のレベルでみると経済的な貧困や家庭・社会での居場所のなさ、社会のレベルでみると女性の地位があまりに低く、ジェンダー不平等な社会構造にあると私たちはとらえます。だから、買春者のほとんどが男性、被買春者のほとんどが女性なのです。

 

たとえば日本では、男性正社員の年収を100とすると、女性正社員の年収はその70%、女性非正規職(アルバイト、パート)はその27%にすぎません(男性:正規労働者550万円、非正規228万円/女性:正規384万円、非正規153万円。「民間給与実態統計調査」2021年より)。しかも女性の過半数は非正規職です。日本の労働の現場は、大卒未満の若年女性や中高年の女性、シングルマザーにとってひときわ不利であり、困窮に追い込まれていることがわかります。

 

経済面だけでなく、社会面においても、女性の生きづらさは顕著です。ジェンダー不平等を背景としたDV・虐待・いじめ・セクハラ・性暴力・知的障がいなどで、自宅・学校・職場に居づらく、昼の職業につきづらい女性たちは多く存在しています。居場所のなさや経済的な困窮、借金の返済、学費や生活費などに苦しみ、「高収入・好待遇」「即金」をかかげる性産業が身近にあると、多くの女性たちが生存のためにそこへ参入せざるをえない状況が広がっています。

また、過去に性暴力被害にあった女性のなかには、その後に性売買を経験したり、性産業に入ったり、AVに出演したりする女性が少なくないといいます。性暴力によって深く傷つきトラウマ記憶になったために、それを乗り越えようとして自傷的な性行動を行うことは「トラウマの再演」といわれています(治療や支援が必要です)。

 

このように、経済的な苦しさや生きづらさ、居場所のなさ、過去の性暴力被害などによる生存やトラウマ克服のための性売買は、ジェンダー不平等な社会構造によってつくられたものであり、女性個人の問題ではなく、社会の問題です。望まない性売買をなくすためには、公的な福祉を充実するのはもちろんですが、女性労働の賃金や待遇を大幅に改善し、必要な治療や支援を受けられるようするなど、ジェンダー平等な社会を実現することが根本的な解決への道です。

買春の現場

実際の買春の現場では、金を支払っている不特定多数の買春客たちのさまざまな性的嗜好に女性たちが一方的に従わなければならなりません。そのつらさに加えて、女性たちはたくさんのリスクにさらされます。本番(性交)の強要、コンドーム無着用、性感染症や望まない妊娠、歯周病、写真や動画の盗撮やその無断販売、人格否定的な暴言や脅迫、暴力や性暴力、プライベートの詮索(身バレ)などです。生命の危機にさらされることもあります。しかし、密室で無防備(無着衣)なまま対面で性器等を接触されて行なわれる買春では、危険を回避することも困難です。

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さらには、性売買女性が簡単に性売買を辞められないように仕向けるさまざまなしくみが性産業には存在しています。店が住居や託児所を準備していたり、借金がある場合は簡単にやめられません。ホストにはまって大金が必要になるように誘導されたりします。2023年にはホストクラブで高額な売掛金(ツケ払い)のため、女性客がAVや性風俗をさせられるケースが社会問題になりました。

 

性風俗では多くの場合、歩合制なので一定の給料が保障されず、ノルマが課されたりします。しかし衣装代、ヘアメイク代、遅刻・欠勤のペナルティ、店に支払う諸経費などは自前です。高い収入が可能なのは大都市の一部の高級店だけで、それも長続きしません。若い女性が好まれ、一時的に稼げても、年齢を重ねると収入が急減していくからです。広告とは違う待遇(詐欺)だったり、ヒモや彼氏の暴力で性売買を強いられたり、人身売買の被害者が強要されている場合もあります。

 

近年、日本でも、性売買経験当事者女性たち自身が、買春の相手をすることの危険と苦しみを語りはじめています。「性売買経験当事者ネットワーク灯火(とうか)」です。

 

以上をふまえ、私たちは、買春/性搾取を批判するとともに、「性を売りたくない女性たちが性を売らなくてもすむ社会の実現」を目指します。そのためには、性売買経験当事者女性たちの声に耳を傾け、その人々と連帯することが不可欠です。

買春・性産業を批判し、性売買女性の生活支援を行なう―北欧モデル

世界に目をむけると、性売買をジェンダー不平等がもたらした現象としてとらえ、性売買業者に加えて買春者を処罰し、他方で性売買当事者女性は処罰せず、その脱性売買を支援する体制を整える国々が存在します。性売買を女性への暴力ととらえ、女性たちが性売買をしなくてもすむ社会を目指そうとしているのです。

 

これらを世界で初めて実現したのがスウェーデンの「買春罪」(1998年制定、1999年施行)です。北欧モデル(ジェンダー平等モデル)といわれるこの法制度は、現在は以下の7カ国3地域に広がりました。ノルウェー(2009年)、アイスランド(2010年)、カナダ(2014年)、フランス(2016年)、アイルランド共和国(2017年)、イスラエル(2018年)、そして、北アイルランド(2015年)、アメリカ合衆国のハワイ州とメイン州(2021、2023年)の3地域です。韓国(2004年)も、部分的ではありますがアジアで初めて導入しました(後述)。

 

また、買春を批判し、性売買当事者女性の脱性売買を支援する体制整備を要求する運動は世界中に存在しています。こうしたなかで、性売買経験当事者女性たち自身による買春批判が世界中で広がっています。

 

しかし一方で、性産業業者を合法化した国も存在します。ドイツやオランダ、ニュージーランドなどです。性産業を合法化した国々では、多種多様な性産業が拡大し、弱い立場に置かれた移民女性たちをはじめとする性売買当事者女性たちの状況がむしろ悪化しています。さらに性売買の包括的非犯罪化(買春者・業者・性売買女性を処罰せず、業者や売り手に特別な規制を課さない)という主張(セックスワーク論)もありますが、これを実現した国はありません。現実には非犯罪化したと言われている国も、合法化した国と大きな違いはありません。

 

このように世界では、〈北欧モデルを求める動向〉と〈性産業・買春の合法化を求める動向〉がせめぎ合っています。これら双方とも性売買女性を処罰しない点では共通していますが、性売買業者と買春者を処罰するかそれとも合法化するのかという点で大きく異なっています。

 

私たちは現時点では、北欧モデルこそが最良の政策と考えます。

韓国における反性売買女性人権運動と
「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」

お隣の韓国では、2000年代に反性売買女性人権運動がはじまりました。北欧モデルをもとに2004年に「性売買防止法」(処罰法と保護法から成る)を施行して、買春者を処罰し、性売買業者への処罰を厳しくする一方で、性の売り手については、処罰規定を残しつつも、性売買を強要された被害者は罰さず、また脱性売買のための支援体制を確立していきました。この法の制定に尽力し、性売買女性たちの脱性搾取を支援する「性売買問題解決のための全国連帯」(2004年結成)というフェミニスト団体が長年にわたって活動しています。

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韓国の性売買の現場で女性支援を行ってきたフェミニストが性売買の実態を明らかにした本書は日本語に翻訳された。

韓国の運動で注目すべきことは、性を売る経験をしてきた当事者女性たち自身による反性売買運動団体「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」(「ムンチ」は団結という意味)が2006年に結成され、買春客や性売買業者の実態を告発する、独自の目覚ましい活動を展開していることです。現在、「全国連帯」やムンチは、すべての性売買女性が非処罰になるよう性売買処罰法の改正運動を繰り広げています(冒頭の下の写真)。

 

日本でも、反性搾取の立場に立って性売買当事者女性の脱性売買支援に乗り出している団体や運動が存在します。一般社団法人Colaboが代表的な団体です。また、売春防止法の問題点が一部改正され、その婦人保護事業が、困難な状況に置かれた女性たちを支援する法律(女性支援新法)に引き継がれました(2022年5月)。同年6月にはAV出演被害防止・救済法も成立しました。それは、出演強要被害を防ぐために出演契約の厳格化や契約の無条件解除を定めました。しかし、性交を行なうAV出演契約の有効性を前提にしており、性売買の合法化の一環であるとして反対運動が生じたことも明記しておきます(冒頭の上の写真)。

 

私たちは、日本と韓国の活動家たちや当事者たちと連帯していきます。

本サイトの目的――日韓の性売買経験当事者女性たちとともに

私たちのサイトは、日本・韓国の反性売買女性人権運動をはじめとする世界各国の動きを紹介するとともに、日韓の性売買経験当事者女性たちと連帯して、性搾取/買春のない社会、だれも性を売らなくても暮らしていける社会の実現を目指します。

 

そのためにこのサイトでは、以下のことを行ないます。

 

  1.  買春/性搾取をとりまく現状、性売買に関する歴史、法制度を日本と韓国、世界に関してわかりやすく発信します。

  2. 買春/性搾取がなぜ問題であるのかを、入門編・Q&A編でわかりやすく説明します。

  3. とくに韓国の反性売買女性人権運動・当事者支援運動と性売買経験当事者女性たちの反性売買運動の主張と活動を紹介します。

 

ぜひいっしょに考えてみませんか?

                                                                                 2024年3月8日

                                                                     Anti-Sexual Exploitation Project:

                                                                     With survivors Japan(ASEP)

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