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韓国の当事者の反性売買運動

韓国で「性売買防止法」制定後に、2006年に結成された当事者運動である「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」とその活動を紹介します。​

​(☞ムンチ結成とその背景にある韓国女性運動

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01

ムンチとはー「私たちの声が実践だ」

韓国では、性を売る経験をしてきた当事者女性たち自身がグループをつくり、買春男性と性売買業者の実態を広く知らしめ、性売買女性をサポートし、人身売買や性搾取をなくすための反性売買の運動を展開しています。そのグループは「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」といいます(以下、「ムンチ」と略します)。

私たちは2019年10月、日本で初めてムンチのメンバーを日本に呼び、東京で研究会を開きました。上記の文章は、この時のムンチ・メンバーの自己紹介です。以下、この研究会でのムンチのトークを紹介しましょう(ムンチの了解を得ています。なお、2023年7月にムンチ初めての出版『無限発話』出版記念会のためメンバーが来日して対面集会を開きました。以下の内容は、この『無限発話』にさらに詳しく紹介されています)。

 

ムンチのメンバーたちの声を聞いてみましょう。

 

 

ムンチは7つのグループが活発に活動をしています。「全北」、「大邱」、「仁川」、「大田」、「釜山」、「光州」です(2019年10月現在)。2023年には、「済州」も加わりました。

ムンチという言葉は韓国語で「一致団結」という意味ですが、上記の発言中にもあるように「集まってできないことがあるだろうか?」という意味を込めて、「ムンチ」と名付け、2006年に活動を開始しました。韓国でも性売買をしていた女性に対する偏見はとても強いので、「私たちが集まって、嫌だったことの話をすることにいったいどんな意味があるのか」と最初は思っていたのだそうです。

 

しかし、ムンチ・メンバーは言いました。2006年に初めて集まって話をした時、当事者で集まって話すのは安全であるということが分かった、と。ムンチの目的は以下の通りです。

 

①「性売買問題解決のための全国連帯」所属組織として、性売買が女性に対する暴力で性搾取行為であるという認識に基づき、人身売買、性売買の根絶を目指すとともに、性売買女性を非犯罪者化し、被害者に対する支援を広げることを目的とする。②当事者運動を通じ、性売買の暴力的本質を明かにし、そのことを広く知らせるために当事者の運動の力量を強化する。

ムンチは2010年から「私たちの経験をどうすればほかの人に知らせることができるのか」ということを考え始め、2012年からは「無限口外」というタイトルを付けたトークコンサートを始めました。この「無限口外」という言葉には「私たちは話し続ける。あなたが聞きたくなくても、私たちは言い続けるんだ」という意味が込められています。新聞への投稿、Facebookなどもやっています。

2006年に当事者としての息苦しさを当事者だけで集まって晴らしてみようと集まった場所で、糸の束を投げ出すように一人ずつ自分たちの経験を話し、胸につかえていたことをさらけだした。

誰かがそういう話をしろって言ったわけじゃなかったのに、その場は子宮の中のように安全に思われた。一緒にいる人たちの視線だけで「あなたは分かってくれるんだ、わたしのことを」という文章がふんわりと浮かんで、喉に消化不良のようにつかえていた話が涙と鼻水とごちゃまぜになって出てきて、その場に集まったみんなの心をほぐしてくれた。

それで作られた。「集まって(ムンチョ)できないことがあるだろうか-ムンチ」が。

それぞれが住んでいる地域で当事者の自助団体を作り、その自助団体が集まってムンチになる。人生も分かち合い、反性売買運動の情熱も分かち合う時間と空間を毎年、同じように何度も何度も作っている。みんな、もう自分の分野で他の仕事をしているけど、性売買の現場で胸が痛む事件が起こるたびに駆け付けて、自らの声を出し抗議をし、追悼儀式も行った。

 

今、ムンチはもう少し自分の声と行動が表に出ることを望んでいる。

自らが満ち足りるという活動から「怒り」と「願い」をこの社会に積極的に示し、「間違っていることは間違っている」と言おうと思う。

02

性売買への世間への人々のまなざし

ノートと鉛筆

「自発的か、自発的じゃないか、なんてない」

ムンチは世間の人たちの先入観を批判します。

ムンチは言います。性売買に「自発的か、自発的じゃないか、なんてない」。性売買が「強制であるのか、それとも自発的であるのか、ということを、いったい誰が区別しようとしているのか」。「なにをもって自発と言えるのか」。「自分の足で、そのお店に行ったこと」を自発というなら、「ムンチ」のメンバーのほとんどが自発的だと言えます。

しかし性売買の現場で経験したことは、自発的ではなかったのです。だから性売買を自発か強制で分けることはできない。つまり「自発的か、自発的でないか、なんてことは言えないんだ」ということをムンチは訴えてきました。

 

世間の人々は、なんで性売買をするようになったのか、とか、どんなふうに始めたのか、とか、どんな被害を受けたのか、とか、どれだけ苦しい思いをしたのか、とか、身体的にどれだけ暴力を受けたのか、とか、そういうことをもって、被害者かそうでないかを区別します。そして世間の望む答えと合っていたら、被害者だとみなされるわけです。自発的か、自発的でないか、ということを区分したがる人は誰なのか?それは警察とか検察をはじめ、私たち性売買当事者女性のことを嫌だと思ってる人たちなのだ、というふうにムンチは考えています。

「明るい」とか「汚い」とか「かわいそう」とかという視線

世間は、性売買について、「明るい」とか「汚い」とか「かわいそう」だとかといった視線を向けます。ムンチ・メンバー同士での話し合いでは、「『かわいそう』って言われるのが、まだマシじゃない?」ということになりました。

性売買について「明るい」イメージで見たがる人たちは、罪悪感を持ちたくないからそのように見たがるのだと思います。買春客は、その相手をする女性たちのことを「セックスが好きだからこの「商売」をやっているんだ」と思えたら、罪悪感なく楽しめるわけじゃないですか?

性売買を「汚い」と考える人たちは、女性たちに多いと思います。知らない男たちと、しかも数え切れないほど多くの男たちと、お金を受けとってセックスすることを「汚い」と思っている視線です。

 

「かわいそう」という視線は、性売買当事者女性を被害者だと見てくれているけれども、すごく上から見てるような感じがします。

結局、性売買当事者女性のイメージは、誰がどのような位置から彼女たちを見るのかによって大きく変わります。

私たちは、この3つの言葉「明るい」「汚い」「かわいそう」のどれも聞きたくありません。私たちは世間の考える「被害者っぽい」姿ではなく、私たち自身の姿、私たちの活動を見てほしいと思っています。

「性暴力と性売買のあいまいな境界」

ムンチは言います。世間の人々は性暴力の被害者と性売買当事者女性をハッキリと区分する。しかし性売買当事者女性が性暴力を受けた場合、話が変わってきます。

1つの例をあげましょう。韓国には「チケット喫茶」と呼ばれる性売買のしくみがあります。たてまえ上はコーヒーの配達なのですが、配達する女性が性売買をするしくみになっています。そのコーヒーの配達に行った女性が性暴力を受けた事件がありました。合意していた性行為ではなく、性暴力を受けたわけです。その女性は警察に訴えました。警察の捜査は始まったのだけど、その買春客は、「性暴力をしたんじゃないよ。だってその女の子が持ってたカバンにお金入れといたからね」って言ったんです。つまりお金を払ったのだから性暴力ではなく性売買だと言うのです。しかもそのお金の金額は、コーヒー代を除いたら、わずかな金額でした。客はコーヒー代よりもすこしだけ余分なお金を入れただけだったんです。にもかかわらず警察は、「じゃあ、それは性暴力じゃなくて、性売買でしょ?」って言ったんです。つまり、性売買をしている女性は、性暴力を受けたとしても、性暴力だと認められないケースが多くあるんです。

もし、この買春客が彼女のカバンにコーヒーのお金を入れなかったとしたら、性暴力だと認めてもらえたでしょうか? いいえ。「ツケでやったんだ」って言えば、もう終わりなんですよ。なにも問題は変わらないわけです。しかも取り締まる側の警察官も買春客だったりするわけです。だから性売買当事者女性が性暴力を受けたとしても、「今日は運が悪かった」と思うしかないのです。だから私たちは性売買と性暴力はとても近いと考えています。

しかし、性暴力被害者を支援する団体のなかには、このような話を嫌がる人たちも多くいます。そして「慰安婦」問題を解決しようとしている人たちの中にも、このような話を嫌がる人たちもいるのではないかと思ってます。

私たちはよく「あなたは殴られたの? お金盗られたの? お金受け取ったの?」と聞かれたりします。お金を受け取ったとしたら性売買で、殴られたとしたら性暴力だということにされるのですが、しかし性売買をしている女性であるというだけで、暴力を受けてお金を受け取らなかったとしても、性暴力であるというふうには見られません。

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03

ムンチへの攻撃―暴露されるのを恐れる買春男たち

ムンチはトークコンサート「無限発話」をしながら、全国各地を回ってきました。それでその「無限発話」の記事がニュースになり、本当に多くのコメントが寄せられました。そしてそのコメントのほとんどが悪口でした。「性売買をしたのが、そんなに自慢なのか?」とか、「ああいう女たちが結婚しようと思ったら、身体を売った男としか結婚できないだろう」とか。トークコンサートで話をした個人に対する個人攻撃もすごくたくさんありました。

 

 投げつけられた言葉をいくつか紹介しましょう。「ブランド品をあさる金の亡者のくせに!」「恋愛も金儲けもできていい商売だな」「楽に稼ごうとしているだらしない女」「売女」。

脅迫もありました。たとえば、「おまえの家に行ってやる」「おまえの子どもが楽に生きていけると思うなよ」「おまえの情報をネットにあげてやる」「やめたならひっそり暮らせよ。そんな話をわざわざするな」「昔は強制的な性売買もあったけど、今はちがうでしょ」「自分が楽しもうとしてやったくせに」「汚い地下道を売っておきながら、男を悪者にしてやがる」。ほかにもたくさんありました。

 

ムンチは集まって話し合いました。これらのコメントや脅迫をよくよく吟味してみました。すると、こうしたコメントや脅迫の多くは、その内容からして買春したことのある男たちにちがいないと考えたのです。買春した経験がなければ言えないような脅迫がたくさんあったからです。

 

つまり、ムンチへの攻撃は、買春男たちが、「自分たちがしてきたことがバレてしまうのではないか」と恐れてやったことだと考えたのです。そして、だからこそ性売買当事者女性がしゃべると攻撃を受けるのだということがよく理解できたのです。考えてみれば、性売買の場で何が行なわれているのかということを本当に知っているのは、買春男とその相手をする当事者女性たちだけです。そして買春男たちの本当に最低な実態を知っているのは私たち当事者女性だけです。

 

ならば、もっともっと活発に活動しようとムンチは考えました。自分たちの見た買春男たちの最低な実情をますます話していかなければならない、と決意を固めまたのです。2015年からムンチは全国各地で「無限発話」トークコンサートをしているので、とても忙しいです。

04

ムンチが暴露する買春男たちの実態

ノートと鉛筆

「クソ女」

「この店で一番売れない女連れてこい」

「後ろの部屋」

「オレシャワーしてきたから」

「ここで借金つくるなよ」

「自分の娘みたいだ」

「条件する?」

これは、ムンチ・メンバーが、まだ性売買の店にいたとき、本当に耳にたこができるくらいしばしば聞いた韓国の買春男たちの言葉のうちの一部です。買春男たちは大体同じようなことを言います。ちょっと意味がわからない言葉もありますよね?言葉の説明を通じて、買春男たちの実態を紹介しましょう。

「この店で一番売れない女連れてこい」

「一番売れる女」ならわかる気がしますが、「一番売れない女」をつれて来いとはどういうことでしょうか?これは、「一番売れない女を指名してやったんだから、オレのやりたい放題やらせろ」という意味なのです。それはつまり、コンドームをつけずにやらせろとか、「お尻に入れさせろ」だったりとか、「口でしろ」とか、そのほか女性が普通やりたくないから、売れる女の子たちだったら拒否するような行為をやらせろということです。だから売れなくて立場が弱くて断れない女を連れてこいと言うのです。

 

「後ろの部屋」

店に長くいて、年配になってしまったり、客から「ブス」「デブ」などと言われる女性たちがいる店です。女性たちがいやがる行為、売れる女の子が拒否するような行為をやりたがる男たちはこの「後ろの部屋」に好んで行きます。

 

「俺シャワーしてきたから」

性売買の店では、性行為をする前に買春男の性器を洗います。しかし、「自分はシャワーしてきたから洗わなくて大丈夫だ」という買春男がしばしばいるのです。なんでそんなことを言うというと、性器のところに勃起を長く続けるための薬みたいなものを塗っているからなのです。その薬を落としたくないから、性器を洗わせないようにするのです。だから、こういう買春男はなかなか射精しないので、女性たちはとても苦労します。買春男たちは女性たちに苦労させたいのです。

 女性たちはそれを知らされずに、口でサービスさせられることがあります。すると、女性の口はその薬のせいで麻痺してしまうことがあります。麻痺して口が閉じられないようになってしまうこともあります。こうした買春男たちを、性売買当事者女性たちは「クソ客」と呼んでいます。

 

「ここで借金作るなよ」「娘みたいだ」

 女性たちは借金がある状態で店に入ってくることが多いのです。たとえば、家出をしてきた女性は、暮らしていくための部屋を借りたり生活必需品を買いそろえたりしなければなりません。これをお店の人が買いそろえるわけですが、それが彼女の借金となります。また、彼女を店に斡旋した人物(日本で言うスカウト)は、店から200~300万ウォンのお金を受け取りますが、これも女性の借金になります。

 買春男の中には、女性たちに借金があることを分かっていて、「自分の娘みたいだから言うんだけど」「借金つくるなよ」などと行ってくるのがいるのです。しかしその一方で、「ちょっと安くしてよ」などとも言ってくるのです。自分が良い人であるように見せて、いい気分になっているわけですね。しかし本当はひどい客で、女性たちはそれを見抜いているので「クソ客」とか呼んでいます。

 

「条件する?」

「条件する?」とは、「出会い系」やマッチングアプリで知り合って、性行為をするという意味です(日本でいう「援助交際」や「パパ活」にあたります)。チャットの中で、「口射」「顔射」「膣射」などの隠語がさかんに飛び交っています。買春男が「口射できる?」「顔射できる?」などの条件を出し、条件が合えば出会うという形です。しかし、チャットで話していた条件通りになることはなかなかありません。性行為が終わって、女性たちがシャワーを浴びているときなどに、お金を支払わずに逃げてしまう男がいます。また、チャット上で、女性がしたくないと言っていた行為を強要する男もいます。「それはしたくないといったじゃないですか!」と男に言っても、暴力を振るわれて、結局やられてしまいます。お金ももらえず殴られたケースもあります。まさしく性暴力です。こうした男たちは、未成年の女の子が警察に訴えにいくことができないことをよくわかってやっているのです。

 車で山の中に連れて行って性暴力を振るい、お金も支払わないで放置して逃げる男もいます。2014年には、ある女の子が殺される事件がありました。「出会い系」で出会った男に殺されたのです。「自分が望んだとおりに彼女がしなかったから」といういう理由で殺されてしまいました。しかし韓国の多くの人達は、こうした事件を目の当たりにしても「女の子が悪かったのだ」と思う人たちが多いのです。「出会い系」を利用しなければそんな目には遭わなかったと言うのです。女の子を殺した男が悪いと認識できる人は多くはありません。

 

 実は、この事件の背後には3人の男がいたことが明らかになりました。1人は女の子を斡旋した人物で、もう1人は女の子が買春男と会うために車で連れて行った人物です。そしてもう1人は、女の子の恋人の役割をしていた男です。つまり、女の子がたった1人でマッチングアプリを使って買春男と出会っているのではなく、複数の人物が彼女にそのように仕向けている仕組みがあるということなのです。この事件が発覚した後、調査が進み、「出会い系」やマッチングアプリでの被害を、女の子の自己責任にしてしまうのはおかしいという議論が少づつ起こってきています。

ノートと鉛筆

05

ムンチが暴露する業者たちの実態

性売買業者は、最初は女性たちに良くします。けれども、その態度はだんだんひどくなっていきます。以下は、業者が女性たちにしばしば発する言葉です。説明しましょう。

「ポルノ撮ったら一発だろ?」

 長く一つの店で性売買していて、借金が1000万円くらいに膨れ上がっている女性たちに対して、しばしばこういうことが言われます。つまり、「日本で性売買して稼いでこい」「日本へ行って、ポルノ(AV)を撮って稼いでこい」という意味です。韓国では差別が強いので、ポルノには出たくないという女性が多いのですが、借金の多い女性たちにとっては、しかたない選択肢の一つになってしまっています。

 

「昼営業した奴だれだ?」

客が少ないときによく業者が言う言葉です。「昼間に営業以外の形で性行為をした奴は誰だ?」つまり、「昼間にタダで男にやらせた奴は誰だ?」という意味です。タダで男にやらせた女がいると、営業に響く、という考え方があるのです。

 しかし女性たちから見れば、常連客に対してサービスしないと売り上げが伸びないので、昼間にサービスすることもあるのです。客が来ないことは皆女性が悪いことにされてしまうわけです。

 

「綿入れて、冷たい水で洗ってやれよ。」

 女性たちには休みの日がありません。生理の時も働きます。買春男たちは生理中の女性とセックスすることを少し嫌がります。「金返せ」と言ってくる客もいます。なのでそれを防ぐために、綿を入れたり、冷たい水で洗ったりして、血が出るのを少しの間止めてやれ、という意味です。その結果、綿が取り出せなくなり、中で腐ってしまう、といったようなこともあります。

 

「最近やたら客が少ねえな、妊娠検査薬買ってこい」

買春男はコンドームをつけないことが多いので、女性たちは運悪く妊娠してしまうことがあるのです。そして、店の女の子が妊娠すると客が来なくなる、といった迷信が韓国の性売買の店にはあります。そこで客が少ない時には、店の関係者が働いている女性の数だけ妊娠検査薬を買ってきます。女性たちは列を作って、店の人に検査薬の結果を伝えるのです。

すると、やはり1人くらいは妊娠している女性がいます。そして、妊娠したら、やはり中絶するしかないのです。中絶するお金もかかるし、中絶手術をする日は営業できません。たとえばその女性が1日5万円稼ぐとしたら、その5万円と、中絶の手術代や入院費は、女性の借金になってしまうのです。普通は中絶した後1週間くらいは安静にしていなければならないですが、1日休むとそれだけ借金が増えるとすると、休むわけにはいきません。中絶してもすぐに客をとらなければならないのです。

06

ムンチの立場表明

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みんな言いますよね、楽して金を稼ごうと性売買するんだって。

酒に酔った客のアレを出させるために体でできるあらゆる行為をしなければいけないし、

それでも出ないときはお金を返さなきゃいけないし、

あらゆるヘンタイ行為を体で耐えなければいけませんでした。

彼らの要求に応じられない場合、暴力を受けることが

一日に何度もあるその場所は、

決してレストランで仕事をすることと同じではなく、

工事現場でレンガを積むことよりも楽ではなく、

コンビニでアルバイトするよりも多くのお金を稼ぐとはいえないと思います。

苦しい生活に借金を作り、暴行、暴言、脅迫に

むしろ死んでしまったらという思いが一日にも何度も浮かぶ場所です。

こんなふうに言う人もいますね。

貧しくて体を売らなければいけない女性は生計型だから、

それをできるように合法化しようと言います。

私にはお金がない人たちは何をされても耐えなければいけないという言葉のように聞こえます。

いわゆる公娼になったなら私が受けた暴力は当然ながらもっとひどくなるし、

女性たちはもっと語れる場所がなくなってしまうだけではなく、

もっと閉鎖的な場所になるだろうと思います。

 

文章を書く才能があるわけでもなく、

たくさん学んで知識があるわけでもないけれど、言いたいことはたくさんあります。

性売買から抜け出した今では、

テレビやインターネットに映る現実が、

ただただ息苦しいのです。

性売買をした女性は暴行を受けても構わないという視線にさらされる世界、

そんな世界を作っている人たちは性を買えといい、

まさにそんな人たちが斡旋者の役割をしているのではないかと思います。

人々は大して考えもせず、

性売買する女たちは楽に稼いで楽に使おうと性売買をしていると考えます。

なぜ性売買女性にならなくてはいけなかったのか、

そしてその中にどれだけ多くの苦しみと辛い人生が溶け込んでいるのか知らないのに、です。

​(2024.3.8)

 

<参考文献>

 ・性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ(2023)『無限発話​〜買われた私たちが語る性売買の現場』​梨の木舎

 ・ポムナル(2023)『道一つ越えたら崖っぷち』アジュマブックス

  • ンパク・ジニョン(2022)『性売買のブラックホール〜韓国の現場から当事者女性とともに打ち破る』ころから

  • チョン・ミレ/イ・ハヨン(2019)、金富子訳「韓国における性売買の政治化と反性売買女性人権運動」http://repository.tufs.ac.jp/bitstream/10108/93335/1/ifa021025.pdf

  • 大邱女性人権センター・大邱広域市(2020)『「チャガルマダン」閉鎖及び自活支援事業白書 1909チャガルマダン_2019私たちの記憶』

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